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京都地方裁判所 昭和35年(ワ)718号 判決 1967年2月04日

原告 国

右指定代理人 川井重男

他八名

被告 園田与蔵

他一六名

被告等訴訟代理人弁護士 松浦武二郎

主文

被告等は、原告に対し、それぞれ、別紙第一表元本欄および損害金欄記載の各金員を支払え。

訴訟費用は被告等の負担とする。

事実

原告指定代理人等は、「被告等は、原告に対し、それぞれ、別紙第一表元本欄および損害金欄記載の各金員を支払え。訴訟費用は被告等の負担とする」との判決を求め、その請求原因を次のとおり述べた。

一、訴外京都民主企業組合(以下本件組合という)は主たる事務所を京都市におき、生産、加工、販売、サービス業等多岐にわたる事業を営むことを目的として設立された中小企業等協同組合法に基く総合企業組合である。

二、本件組合は、別紙第二表記載のとおり各種の税を滞納し、昭和三五年六月三〇日当時の滞納税額は、同表の一記載のとおり、所得税、法人税および加算税等合計金一五、六二四、七八三円であった

三、<省略>。

四、(一) そして、左記(A)から(B)を控除した残額が、本件組合の脱退組合員に対する精算金債権となるわけである。

(A)組合が脱退組合員から徴収すべきもの(別紙第五表資産欄記載の資産)

(1)  組合から脱退者に売渡す什器、備品、機械工具等固定資産の代価

(2)  組合から脱退者に売渡す商品等棚卸資産の代価

(3)  組合から脱退者に譲渡した売掛金その他組合の有する債権の価額に相当する金額

(4)  脱退時に当該事業所にある売上金、仕入のための資金等の手持現金

(5)  組合が各組合員に割当てた確保金等の未納額

(B)組合が脱退組合員に対して支払うべきもの(別紙第五表負債欄記載の負債)

(1)脱退者が引受けた当該事業所の営業により生じた買掛金その他組合の債務の価額に相当する金額

(2)  当該事業所従業員に対する給料その他未払金

(3)  組合員の組合加入前の営業により生じた未納の地方税の納付にあてるため、組合員の給料その他の現金を組合に積立てていた積立金

(4)  出資金額

(5)  組合が各事業年度毎に組合員に配当すべき剰余金の未払額

(6)  脱退者の脱退時の属する事業年度における持分に相当する金額

(二) <省略>。

五、そこで、原告は、別紙第四表差押年月日欄記載の日に、右滞納税金徴収のため(各差押当時の滞納税金の詳細は別紙第二表記載のとおり)、別紙第四表差押金額欄記載の前記精算金債権の差押、追加差押、一部解除をなし、その頃被告等に通知した。

六、その後、被告等から、大阪国税局長に対し、別紙第五表審査請求年月日欄記載の日に、前記差押を不服とする審査請求がなされたので、原告は、各事業所の閉鎖時の資産、負債を調査し、同表資産、負債欄記載のとおりの調査結果を得たので、これに基き同表決定内容、年月日欄および決定金額欄記載のとおり決定し、この決定金額が、本件組合の被告等脱退組合員に対する精算金債権額となるわけである。

そこで、原告は、必要に応じ、別紙第四表記載のとおり、追加差押、差押金額減縮の措置を採ったのである。

七、その後、被告等は、原告に対し、別紙第六表記載のとおり、右精算金債権につき、内金の支払をした。

よって、原告は、被告等に対し、前記滞納処分としての差押、追加差押に基き、前記精算金債権額、内金の支払があったものについてはその残額の範囲内で、それぞれ別紙第一表元本欄記載の金員およびこれに対する履行期到来ののちたる同表損害金欄記載の日以降支払ずみまで、民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

被告等訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、答弁として次のとおり述べた。

一、原告主張請求原因事実第一項は認める。

二、同第二項は知らない。

三、同第三項のうち、旭相続人等を除くその余の被告等および亡旭亀尾が、もと本件組合の組合員であり、その後脱退したことは認めるが、その余は否認する。

四、同第四項のうち、原告主張の日に、旭亀尾が死亡し、その妻被告旭サワヨ、養子被告旭五郎、次女被告旭恭子、三女被告旭文江が、右亀尾の相続人となったことは認めるが、その余は否認する。

五、原告主張請求原因事実第五項は認める。

六、同第六項のうち、原告主張の日に、被告等が大阪国税局長に対して審査請求をなし、同局長がその主張のとおりの日時、内容、決定金額の決定をなしたこと、原告が、その主張の日に、その主張のとおり、追加差押、差押金額減縮の措置を採り、その頃被告等に通知したことは認めるが、その余は否認する。

七、原告主張請求原因事実第七項は認める。

証拠として<以下省略>。

理由

一、原告主張請求原因事実第一項は、当事者間に争いがなく、右事実によれば、本件組合が、法人税、物品税の納税義務者であり、所得税の(源泉)徴収義務者であることが明らかである。

二、成立に争いない甲第一号証の一と弁論の全趣旨によれば、原告主張請求原因事実第二項が認められ、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

三、ところで、原告は、本件組合の右滞納税金徴収のため、滞納処分として、本件組合が被告等に対して有する組合脱退に因る精算金債権を差押えたと主張するので、先ず右精算金債権の存否について検討する。

(一)  <省略>。

(二)  <省略>と弁論の全趣旨を総合すれば、旭相続人等を除くその余の被告等および亡旭亀尾が、以前別紙第三表営業欄記載の事業を営んでいたが、同表加入年月日欄記載の日に、本件組合に対し、同表出資金額欄記載の金額を出資(個人営業の資産、負債を有姿のまま譲渡し、その差額を出資金額とする)して、本件組合に加入し、以後各事業所(従前の個人の営業所)の主任として、当該事業に従事し、本件組合から、給与の支払を受けるに至ったことが認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

(三)  <省略>によれば、旭相続人等を除くその余の被告等および亡旭亀尾が本件組合に対して脱退通知をしたのは、別紙第四表脱退通知年月日欄記載の日であること、本件組合の事業年度が一年であり、毎年四月一日に始まり、翌年三月三一日に終ること、右被告等が脱退の日に各事業所の資産、負債を有姿のまま承継したことが認められ、乙第二号証の存在は右認定の妨げとならず他に右認定を覆すに足る証拠はない。

そして、中小企業等協同組合法第一八条第一項に則り、組合員は、九〇日前までに予告し、事業年度の終において任意脱退することができるわけであるから、右認定事実によれば、右被告等は、右脱退通知(予告)の日の属する事業年度の終である別紙第四表脱退年月日欄記載の日に、本件組合を脱退したことになる。

(四)  そこで、原告主張の精算金債権の内容について検討する。

(1)(2) <省略>

(3) 以上の事実によれば、原告が差押えうべき精算金債権額は、前記(1)の金額から、(2)の金額を控除した残額(別紙第五表決定金額欄記載の(合計)金額となることが明らかである。

四、そこで、本件差押の効力について検討する。

原告主張請求原因事実第五項は、当事者間に争いがない。

右事実によれば、原告が被告等に通知した被差押債権たる各精算金債権の金額が、前記差押えうべき債権額よりも若干多いのであるが、この程度の差異をもってしては、到底、被差押債権の特定を欠いているということはできない。

また、被告高橋好子の場合、最初の差押当時、すでに組合脱退の予告がなされていたが、未だ脱退の効果が発生していない。しかし、中小企業等協同組合法に基く企業組合の脱退組合員に対する。組合脱退に因る精算金債権は、組合脱退の効果発生前においても、すでに脱退の予告がなされているとき、すでにその発生原因が確立し権利を特定することができ、かつその発生の確実性が強度であるから、差押の対象になりうると解するのが相当である。

なお、本件各差押当時の本件組合(滞納者)の滞納税金合計額は、別紙第七表記載のとおり、いずれも被差押債権の合計(累計)額を上廻っている。

従って、本件差押は、第三債務者たる被告等に対する差押の通知により、その効力を生じたことが明らかである。

五、従って、原告は、国税徴収法(昭和三四年法律第一四七号による改正前)第二三条の一により、被差押債権たる前記各精算金債権の取立権を取得し、債権者たる本件組合の権利を行使しうるに至ったと解せられる。

また、原告主張請求原因事実第七項は、当事者間に争いがない。

以上の事実によれば、原告は、本件差押に基き、被告等に対し、前記三記載差押えうべき精算金債権額(旭相続人等は、前記三(一)の相続分による)から、右内金支払額を控除した残額(別紙第一表損害金欄記載の元本額)の支払を請求しうる権利を有することが明らかである。

また前記事実によれば、右元本については、各差押によって、原告主張のとおり履行期が到来していることが明らかである。従って、被告等は、原告に対し、別紙第一表元本欄および損害金欄記載の各金員を支払う義務がある。

六、以上の次第であるから、原告の被告等に対する本訴請求は、いずれも理由があるからこれを認容し、<以下省略>。

<以下省略>

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